suzunari’s blog

大学生ののんびりブログです。

村上春樹作品 個人ランキング 長編ver.

はじめに

 珍しく、お久しぶりではないです。この前書かなかった村上春樹さんの個人ランキングの続きを10/27~11/9の読書週間に合わせて書きたいと思います!カレンダーにこの読書週間が載っていたのでそんなことを思いついたのですが、読書週間は思ったより歴史があるみたいですね。検索一発目に出てきたwikiさんによると1924年日本図書館協会が11/17~11/23まで図書週間と定めたのが始まり?なのかな。ポスターがレトロで可愛いです。

 

まず村上春樹作品の比喩について〜

 ではスタートします。ただ、村上春樹さん自身についてやこのランキングの基本姿勢(笑)については二個前の短編ランキングに書いたと思うので割愛します。最初にランキングに入る前に、前回書けなかった比喩について書いておこうと思います。村上春樹作品は知名度の割にかなり読めない人が多くいるように思い、独特の文章が特徴です。(逆に最後まで読まない人がいることで、村上作品は古本屋でも他の本と比べて大分綺麗な状態で安くゲットできるのはいいところ。かく言う私も中学生の時は読みかけて眠くなって断念しました。)あとその文章を真似して「村上構文」と言ったりしてる人もいました笑。一言で言うといい意味ではくせになるし、悪い意味ではしつこい、っていう感じです。それからよく読んでいる人はその文体が染み付いているのか書く文章も村上春樹さんっぽくなっているのが面白いです。私も読み終わった後はあの言葉遣いが頭の中でずっとこだましているような気分になったり、、。ちなみに私が自分でおおっ?と思ったのは駿台予備校の現代文霜栄先生の参考書を読んだ時です。(「現代文読解力の開発講座」)前書きの感じが村上春樹っぽさ満載です。「〜なわけだし、」「〜なだけなんだ。」という言葉遣いや、やけに片仮名が出てくるところですね笑。他にも#村上春樹で語る育児 とかをツイッターで検索するとぽいのが沢山出てくるので面白いです。おそらくあの語り口は外国小説に近いので、翻訳家としての癖なのかあとも思います。

 全然比喩にいけていませんでした、、。村上作品の比喩(直喩?)や事例は70年代や60年代の映画や小説を使うことが多くて、単純に知らなくてよくわからない、ということが多発します。まあ両親世代に聞くと知っているので逆に話が盛り上がるということもありますが…。ボブディランくらいならわかるけれど、それ以外はタイトルすら聞いたことないものが多いです。私は、なんとなく今の映画だとこういう系かな、と置き換えながら補填しています笑。隠喩やイメージは映像的なものが多く、とても頭に思い描きやすいなぁと思います。これは結構他の作家さんと比べて凄いなと思ったところです。私の想像力に合っていたのかもしれないけれど、本当に読んですぐ考えずに映像が目の前をぶわぁっと流れているような気分になります。自分がその世界に入り込んでいるような気分ですね。最近思ったのですが、読書体験はセルフVRに結構近いんじゃないかな〜と考えています。匂いや感触も想像力で再現できてしまうなんて脳は凄いな、、!と(自分の脳なのに)思います。

 

長編ランキング

それでは、ネタバレ含む個人的長編ランキングにいきたいと思います。ただこちらも短編と同様全作品読んだ訳ではないので「個人的な」感じです。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(これは短編?)と『騎士団長殺し』を読んでないですね、。短編に比べ色々語りが多くなってますがご了承ください笑。

 

⑥『ノルウェイの森

 まず、ランキング⑥は『ノルウェイの森』。これは松山ケンイチさんと菊地凛子さん主演で映画化もされているので知名度が高い。一回は必ず見てみたい。あらすじは高校生のころ自殺した親友がいて、主人公は大学生になってその親友の彼女に再会し惹かれていく。でも彼女もまた死に近づく、、。60年代の学生闘争が背景でそこは私には新鮮。主役以外の人(レイコさん、緑、ハツミさん)の性格やキャラが良くて暗めな主役を引っ張り上げてくれる。

 『ノルウェイの森』はかなりR18系が多くて食傷気味、、となるところもあるけどやっぱり死が一つのテーマになってる所が面白い。(多分もう一つのテーマは性)登場人物のいろんな所に死が関わってきて、「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ。」の台詞も有名。ただ個人的にはそのあとに続くところも好き。→でもそれは真理の一部でしかないし、死による哀しみは何ものにも癒すことはできない、そして次の哀しみへのなんの役にも立たない。っていうところ。

 ちなみに短編の『蛍、納屋を焼く、その他の短編』の「蛍」や「めくらやなぎと眠る女」がこのノルウェイの森に繋がってくる。ノルウェイの森は、内容は暗いトーンが基調だけど緑やレイコさんと主人公の会話が朗らかで好き。主人公が緑を慰める時の「春の熊くらい可愛い。」って言う台詞や緑の言葉一つ一つが結構いい。

 

 

⑤『羊をめぐる冒険

 『羊をめぐる冒険』は主人公の僕と親友の「鼠」が登場する初期三部作の最終巻。『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』『羊をめぐる冒険』の3つで鼠三部作とも呼ばれるけど、話が完全に繋がっている訳ではないので(一応時系列だとは思う)どんな順で読んでも大丈夫。私はこれから読んだ。あらすじは変な模様の羊を探す話で、まさに羊をめぐる冒険。その変な羊が日本社会の裏側と関係してて、そこにしばらく会っていない親友の鼠も関わってくる。鼠っていう名前にしばらく慣れなかった記憶がある笑。

 でもこれはそんなに読みづらくもなくスイスイ読める印象。北海道の寂れた町のイメージが強くて、全体的に寒々として物悲しい。特に最後の「弱さ」についての鼠の言葉がとても好きで、私の中では名台詞だし救われる。これは書かないでおこう。

 

 

④『国境の南、太陽の西

 これはあまり有名ではないような気もするが結構好き。『ねじまき鳥クロニクル』とかと同じ頃に書かれたようだと思う。どちらかと言うと雰囲気が短編らしくて、一人っ子同士の小学校の幼馴染が大人になって再会する話。

 いろんなことが変わってしまったひんやりとした切なさが強い。作品に出てくるレコードを知らないのが残念だけど、いつか聞いてみたい。再会する幼馴染の女性が青い服を着ていてとても綺麗な感じが読むとすごく伝わってくる。淡々としながら、やっぱり切ないし儚い。作中にも出てくる雪溶けみたいな感じ。少年少女の淡い憧憬と大人になってそれぞれの現実を生きるリアルさが混ざっていて、そのリアルさから逃げようとしているけれど最後は受け止めるイメージの作品。

 ちなみに主人公の男性は東京でバーを持っていて、この感じは村上春樹さん自身をベースにしている気がする。

 

 

③『スプートニクの恋人

 表題のスプートニクは宇宙に飛ばされたロシアの人工衛星の名前らしい。地球の周りを周回しながら、決して他のものと交わることなく生涯を終える孤独さのモチーフ、メタファー?らしい。これはとにかく勢い!って感じの作品。最初の滑り出しの荒っぽさが好きで、風がごうっと吹き抜ける感じ。主人公は男だけど、好きな女友達すみれは年上の女性ミュウに「記念碑的な」恋をしてしまって、基本傍観者の主人公から語られていく。

 すみれとミュウは仕事をして親しくなるけど、ある一定の距離は絶対に超えられない。それはスプートニクの衛星が交わらないのと同じように。切ない。理由には、ミュウの過去が関係していて、、。そして旅行先のギリシャで世界が交差する。

 あらすじはこんな感じだけど書くと意味わからないですね。笑 村上春樹さんは短編でもそうだけど「この世界と違う世界とのつながり、行き来」を書くことが多くて、『スプートニクの恋人』はその典型的な例。他にも、『ねじまき鳥クロニクル』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『1Q84』、『海辺のカフカ』もそのイメージが入ってくると思う。逆に村上春樹さんっぽい「僕」が主人公だとあまりそういうことはなくて、それ以外のファンタジー系だと大体世界が二つ以上あって何かの弾みで交差してしまう。パラレルワールドに近いけどちょっと違う気もする。

 個人的にはラストが少し気になるけれど『スプートニクの恋人』はかなり好きな作品。ちなみに高校の文化祭の古本市で無料でゲットした。

 

②『ダンス・ダンス・ダンス

 『ダンス・ダンス・ダンス』は『羊をめぐる冒険』で話した初期三部作の後日談みたいな感じで、『羊をめぐる冒険』で会えなくなった耳の美しいガールフレンドを探して北海道やハワイに行く話。これを読んでいると心の底からハワイに行きたくなる…!これも『スプートニクの恋人』と同じく「こちらの世界」と「あちらの世界」があって、少し怖い感じがありながらも主人公が「僕の人生とはなんなのか?」と自問自答しながら進んでいく感じ。

 この中で特に好きなのは俳優の五反田くんの話。偶然同級生だった主人公と再開して仲良くなるけれど、五反田くんの「絶望的に絶望している」状況や演じる自分と本来の自分との溝がどうしようもなく徐々に広がっていってしまう感じがすごく心にくる。主人公に言わせると五反田くんの話は「彼は初めからそうするしかないことがわかっていたんだ」というラストになってしまうけど、、。

 『ダンス・ダンス・ダンス』がとても好きなのは、人生の意味みたいなものをさらっといってくれているから。「意味なんてないんだ、ただ踊り続けるだけ。ステップをちゃんと踏んで、誰よりも上手に踊るんだ」と言ってくれると虚しさとか虚無が薄れる気がして、ほっとする。誰しもそういう虚しさは抱えていると思うし、特に不安定な若い時は「意味なんてあるのかな…」と色々考えてしまうけど、そこに一つの答えを提示してくれるところが良い。ぜひ読んでほしい。

 

 

①『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

 ラスト!個人的一位はこの作品。実は中学生の頃読みかけて眠くなって一旦断念したのもこの作品ですが、、。これは、既に書いた『スプートニクの恋人』でも出てきたような二つの世界が登場する話だけど、他の作品と違い完全に二世界が分けられずっと並行して書かれていく。(『1Q84』も並行型だけど主人公が二人いてその二視点での世界)この並行して全く異なる世界が書かれていくのは、初めは二つの世界を頭の中で共存させることが難しくて覚えているのが大変になったりしたけど、物語上でだんだんその二世界が交わっていくので面白くなってくる。

 あらすじは、、難しいんですけど①の世界 ハードボイルド・ワンダーランド では計算士(システム)と記号士(ファクトリー)が様々な情報を守る、奪うの対立構造で主人公は計算士として仕事をしている。そして天才科学者のデータ情報を守る任務によって「世界が終わる」ことに巻き込まれていく。 ②の世界 世界の終り では壁と一角獣に囲まれ完結した世界に迷い込んだ主人公が、獣の頭骨を使う夢読みの仕事をしながら街についての不思議を探っていく。この②の世界の主人公は、街に入る時に自分の影を切り離されてしまって、影を救おうともしている。

 とまあ結構村上作品の中でも特にファンタジックな要素が強く、設定の作り込み方が他とは大きく異なる。そしてこれは最初の比喩のところで言った「映像的なシーン」が多く、ハードボイルド・ワンダーランドで地下の冒険をするところなんか自分も駆け抜けているような気分になる。あと、②の世界の終りの街で主人公が完結性のために心をなくすのかどうか、という話が好き。街の人の「心があるのなら、心があるうちにそれを働かせなさい。」の台詞が印象深い。個人的には、心からどきどきして、揺り動かされるような小説だと思う。

 

結果:

①『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 1985年

②『ダンス・ダンス・ダンス』 1988年

③『スプートニクの恋人』 1999年

④『国境の南、太陽の西』 1992年

⑤『羊をめぐる冒険』 1982年

⑥『ノルウェイの森』 1987年  

 

おわりに

 はい。ということでなんとか6作品私の好きなものをセレクトして感想らしきものを書いてみました。他にも好きなのはたくさんあるけれど……!初めて読む人におすすめなのは、癖の少ないものとしては①の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』とか②の『ダンス・ダンス・ダンス』でしょうか、、?ただ長編はやはり短編より読み切るのが大変なところもあるのでやっぱり勧めるなら断然短編集です笑。そういう意味では③、④の作品の方が短編に近いような気もします。迷うので中々結論は出ないですね。個人的に村上作品は映像が浮かんでくる凄さと、印象的な台詞が好きなんだな〜と書いていて思いました。村上春樹さんが翻訳した外国小説はあまり読んだことはないのですが、そっちも読んでみたいです。

 

ありがとうございました。

 

コロナの収束を祈願。

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村上作品一部。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お題「我が家の本棚」